樹木葬とは?費用相場から特徴・メリットまで完全ガイド

💡記事を先読み
- 樹木葬は特に都市部で人気が高まっている
- 従来の墓石のスタイルより費用を抑えることができる
- 基本的には樹木葬は一度埋葬した遺骨を取り出すことができない
樹木葬とは?
近年、メディアで頻繁に取り上げられる「樹木葬」という言葉。
自然に還るというイメージはあっても、具体的な仕組みや埋葬方法は、多くの人が理解していないのではないでしょうか。
樹木葬とは、故人の遺骨を樹木の下に埋葬し、その樹木を墓標とする新しいタイプの埋葬方法です。
自然に溶け込むように、故人を安らかに眠らせることができる点が大きな特徴で、従来の墓石やコンクリート製の墓所とは異なり、自然環境と調和した、優しい印象のお墓と言えるでしょう。
樹木葬のスタイルは多様で、樹木だけでなく、草花や芝生で彩られたガーデン風の樹木葬も人気です。
また、樹木葬は後継者を必要としない永続的な供養方法として注目されています。永代供養を行う納骨堂や合祀墓などの選択肢の中に最近では樹木葬も含まれてきています。
2025年現在、樹木葬は従来型のお墓に代わる選択肢として定着し、特に都市部での人気が高まっています。
環境意識の高まりと少子高齢化の進展により、持続可能で継承者を必要としない埋葬方法として、樹木葬の需要は今後も拡大すると予測されています。
従来のお墓との違い
比較項目 | 従来のお墓 | 樹木葬 |
---|---|---|
墓標 | 墓石 | 樹木や草花 |
継承 | 必要(代々継承)・不要な場合もある | 不要(永代供養が基本) |
費用 | 高い(150万円~300万円以上) | 比較的安い(5万円~80万円程度) |
管理 | 定期的な掃除や手入れが必要 | 管理は墓地側が行う場合が多い |
環境への影響 | 石材の採掘や加工で環境負荷あり | 自然と調和し環境負荷が少ない |
樹木葬の種類
樹木葬には、いくつかの種類があります。
それぞれの特徴を理解し、自分や家族に合った形式を選ぶことが大切です。
埋葬形式による分類
永代使用権付きの樹木葬(個別型)
特定の樹木を家族だけで使用できる「プライベートな樹木葬」です。
費用は比較的高めですが、家族だけの空間で故人を偲ぶことができます。
費用相場は50万円~150万円程度です。
集合埋葬型の樹木葬
一つの大きな樹木や区画の周りに複数の遺骨を埋葬するタイプです。
個別型よりも費用を抑えられ、それぞれの遺骨の位置が区別されている場合が多いです。
費用相場は20万円~50万円程度です。
合祀型(合葬型)の樹木葬
複数の遺骨を同じ場所にまとめて埋葬する、共同墓地のような形式です。
最も費用が抑えられる形式で、費用相場は5万円~20万円程度です。
デザインによる分類
シンボルツリー型
一本の大きな樹木をシンボルとして、その周りに遺骨を埋葬するタイプです。
樹木は桜、楓、椿など様々な種類があり、季節ごとに変化する風景を楽しめます。
ガーデニング型
草花や芝生などで彩られた庭園のような空間に遺骨を埋葬するタイプです。
明るく開放的な雰囲気で人気があります。
自然林型
自然の森や林の中に遺骨を埋葬するタイプです。
最も自然に近い形で故人を見送ることができます。

樹木葬のメリット
樹木葬を選ぶメリットはたくさんあります。
特に近年、少子高齢化や価値観の多様化に伴い、従来のお墓にこだわらない人が増えているため、樹木葬の需要が高まっています。
具体的には下記のようなメリットがあります。
- 継承者が不要(永代供養)
樹木葬は多くの場合、永代供養が基本となっています。お墓の継承問題で悩む必要がなく、子どもがいない方や単身の方でも安心して利用できます。
現在、お墓の継承問題は深刻化しており、この点が樹木葬を選ぶ最大の理由となっています。 - 費用が比較的安い
従来の墓石を用いたお墓と比べて、費用を抑えられます。
墓石代や石材加工費が不要なため、総費用は一般的に5万円~80万円程度と、従来のお墓(150万円~300万円以上)より大幅に安くなります。 - 自然に還るやすらぎ
自然環境の中で故人を見送ることができ、心の安らぎを感じられます。
季節ごとに変化する樹木や花々は、生命の循環を感じさせ、故人を偲ぶ新しい形として支持されています。 - 管理の手間が少ない
従来のお墓のように、定期的な掃除やメンテナンスが不要な場合が多いです。
管理は基本的に墓地側が行うため、遠方に住んでいる方でも安心です。 - 環境にやさしい
墓石の採掘や加工による環境負荷がなく、自然との調和を重視した埋葬方法です。
環境意識の高い方に特に支持されています。 - 宗教・宗派を問わない場合が多い
多くの樹木葬墓地では、宗教や宗派を問わず利用できます。
特に民間の樹木葬では、自由な形で供養できる点が魅力です。
樹木葬のデメリット・注意点
樹木葬には多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットや注意点もあります。
実際に契約する前に、これらの点をしっかり理解しておきましょう。
- 遺骨の取り出しが困難
一度埋葬すると、後から遺骨を取り出すことが難しい場合が多いです。
特に合祀型の場合は、ほぼ不可能です。
将来的に別の場所に移す可能性がある場合は注意が必要です。 - 粉骨が必須の場合がある
多くの樹木葬では、遺骨を細かく砕く「粉骨」が必要です。
これに抵抗感を持つ方もいるため、事前に確認しておきましょう。 - アクセスの問題
自然環境を重視するため、交通の便が悪い場所にある樹木葬も少なくありません。
高齢になったときのお参りのしやすさも考慮しましょう。 - 埋葬人数の制限
基本的に1人分の費用であるため、家族で利用する場合は人数分の費用がかかります。
複数人で利用するなら、従来型のお墓のほうが全体の費用を抑えられる可能性もあります。 - 季節や天候による影響
屋外の自然環境のため、季節や天候によってお参りの状況が左右されます。
また、樹木は寿命があり、いずれ枯れる可能性もあります。 - 法律上の制限
樹木葬は墓地、埋葬等に関する法律に基づき、許可を受けた墓地でのみ行えます。
勝手に自宅の庭などに埋葬することはできませんので注意が必要です。
樹木葬の費用相場
樹木葬の費用は、従来のお墓に比べて抑えられる傾向にありますが、タイプや地域によって大きく異なります。
2025年現在の一般的な費用相場を紹介します。
埋葬形式別の費用相場
埋葬形式 | 費用相場 | 特徴 |
---|---|---|
個別埋葬型 | 50万円~150万円 | 特定の樹木や区画を個人・家族で専有できる |
集合埋葬型 | 20万円~50万円 | 1本の樹木の周りに複数の遺骨を埋葬するが、位置は区別される |
合祀型(合葬型) | 5万円~20万円 | 複数の遺骨をまとめて埋葬する、最も低コストな選択肢 |
地域別の費用相場
地域 | 個別型の相場 | 合祀型の相場 |
---|---|---|
東京都 | 80万円~150万円 | 10万円~20万円 |
神奈川県 | 70万円~120万円 | 8万円~18万円 |
大阪府 | 60万円~100万円 | 7万円~15万円 |
地方都市 | 40万円~80万円 | 5万円~12万円 |
費用に影響する要素
費用に影響する要素は立地や樹木の種類、付帯設備などが挙げられます。
都市部の一等地や交通アクセスの良い場所は費用が高くなりやすく、桜やモミジなどの人気の樹木も割高になる傾向があります。
また、休憩所の有無やセレモニーホールなどの設備が充実している場所は費用が高くなります。
他にも、供養の内容(永代供養の有無など)や公営か民間かなどによっても費用は変動します。
特に民間の樹木葬は公営に比べて費用が高くなる傾向にあります。
2025年現在、環境意識の高まりと需要の増加により、樹木葬施設は全国的に増加傾向にあります。
さらに、競争が活発化したためサービス内容の充実と価格の適正化も進んでいます。
特に地方自治体が運営する公営の樹木葬では、費用を抑える傾向が強まっています。

民間と公営の樹木葬の違い
樹木葬は運営主体によって大きく「民間」と「公営」に分けられます。
それぞれの特徴を比較して、自分に合った選択をしましょう。
比較項目 | 民間の樹木葬 | 公営の樹木葬 |
---|---|---|
運営主体 | 民間企業や宗教法人 | 市町村などの自治体 |
費用 | 20万円~80万円程度 | 5万円~30万円程度 |
申込条件 | 比較的自由(全国どこからでも可能) | 居住地域限定の場合が多い |
宗教・宗派 | 宗教法人運営の場合は制限あり | 基本的に宗教・宗派不問 |
供養形式 | 永代供養や合同供養など選択肢が多い | 基本的に合同供養が中心 |
施設・サービス | 充実している場合が多い | 必要最低限の設備が中心 |
民間・公営それぞれのメリット
民間の樹木葬のメリットは次のようなものになります。
- サービスや施設が充実している
- 選択肢が豊富で自分の希望に合わせやすい
- 居住地に関係なく申し込める
- デザイン性の高い墓地が多い
公営の樹木葬のメリットは下記になります。
- 費用が安く抑えられる
- 公的機関が運営するため安心感がある
- 宗教・宗派を問わない
- シンプルで分かりやすい料金体系
後悔しない樹木葬の選び方
樹木葬を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを押さえておくことで、後悔のない選択ができます。
- 立地アクセスを重視する
お参りのしやすさを考慮して、交通アクセスの良い場所を選びましょう。
特に高齢になったときのことも考えて、公共交通機関でアクセスできるかどうかも確認しておくと安心です。 - 運営主体の信頼性を確認
永代供養を約束している以上、運営主体の安定性や信頼性は非常に重要です。
運営歴や実績、財務状況などをチェックしましょう。 - 墓地の環境をチェック
樹木の種類や周囲の環境、景観などを確認しましょう。
季節ごとの景観の変化も考慮すると良いでしょう。
また、日当たりや風通しなども重要なポイントです。 - 供養内容を確認
永代供養の内容や頻度、法要の有無などを確認しましょう。
特に宗教・宗派にこだわりがある場合は、それに対応しているかどうかも重要です。 - 将来的な管理体制を確認
運営会社が倒産した場合や、樹木が寿命を迎えた場合の対応なども事前に確認しておくと安心です。
管理費の使い道や、将来的な維持管理の計画なども確認しましょう。 - 契約内容をしっかり確認
契約内容、特に料金体系や追加費用の有無、解約時の条件などをしっかり理解しておきましょう。
不明点があれば、契約前に必ず確認することが大切です。
よくある質問
樹木葬は遺骨を樹木の下に埋葬する方法で、墓地埋葬法に基づいた正規の埋葬方法です。一方、散骨は遺骨を粉末状にして自然に撒く行為で、法律上は明確な規定がなくグレーゾーンとされています。樹木葬は許可を受けた墓地内でのみ行える点が大きな違いです。
法律上、遺骨を埋葬できるのは自治体から許可を受けた墓地のみとされています。そのため、自宅の庭で樹木葬を行うことは法律違反となります。必ず許可を得た墓地内で行うようにしてください。
以下のような方に特に向いています。
- お墓の継承者がいない、または継承の心配をしたくない方
- 自然志向で、環境に配慮した埋葬方法を望む方
- 費用を抑えたい方
- 従来の墓地よりも明るい雰囲気の中で眠りたい方
- 宗教・宗派にとらわれない供養を希望する方
運営者によって対応は異なりますが、一般的には新しい樹木を植え直します。契約前に、樹木が枯れた場合の対応について確認しておくことをおすすめします。
樹木葬の形式によって異なります。個別埋葬型であれば、取り出せる場合もありますが、合祀型の場合は基本的に取り出せません。契約前に確認しておくことが重要です。
まとめ
樹木葬は、自然に還りたいという願いを叶え、後継者の心配をせずに安らかに眠れる新しい埋葬方法として、近年急速に普及しています。
少子高齢化の進展と価値観の多様化により、樹木葬の需要は今後も拡大すると予測されています。
各地で新しい樹木葬墓地が増加し、サービス内容も多様化しています。
今後は、より個性的でデザイン性の高い樹木葬や、IT技術を活用した新しい供養スタイルなども登場するでしょう。
終活の一環として、自分らしい最期の場所を選ぶことは、残された家族への思いやりにもつながります。
樹木葬という選択肢を通じて、自分の価値観に合った供養の形を見つけてみてはいかがでしょうか。